●PROFILE*
売れなかったフォークシンガーの歌
ばかりを歌っていたカズ。
その日、歌っていると雨が降り出した。
通りがかる人もいない井の頭公園は
瞬く間にどしゃぶりとなった。
あわてて楽器をしまいこみ、
家路につこうとしたカズは
不思議な光景を見た。
真白い傘をさし、その傘に包まれるように
誰かがしゃがみ込んでいる。
「あれは…日傘?」
強く興味を覚えたカズは、
傘の中の人物に気付かれぬよう
(どしゃぶりなので気配など全くかき消されているのだが)
ゆっくりと近づいた。
彼女は、猫を抱いていた。
猫は、眠っていた。
カズは何かに突き動かされるように
彼女に話しかけた。
「なんで…日傘?」
彼女は笑った。「フフフ」
そしてうなずいて言った。
「止むよ」
カズは自らの傘を捨てギターを取り出しそしてかき鳴らした。
どしゃぶりの雨の中で。
彼女は歌いだした。「ラララ」
まるで当たり前のように。
どしゃぶりの雨の中で、
ギターの音色と歌声はかき消えることなく響き合った。
その音楽は、
劇的フォークデュオ
「カズとアマンダ」の
産声だった。

photo* KAYO takahashi
